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「グループ共通ポイントカード導入」プロジェクト
2008年9月1日、遠鉄グループで一斉にスタートした「えんてつカード」。ポイントカードをベースに、クレジット機能を付加でき、遠鉄グループのあらゆるサービスで、共通ポイントを貯めることが可能だ。ポイントの貯めやすさに加え、1ポイントから使える利便性の高さやマクドナルドとの提携(※)でも話題を呼んだ。
遠鉄のグループパワーを象徴するだけでなく、いまだ大きな可能性を秘めたえんてつカードはどのようにして生まれたのか。当時を知るプロジェクトメンバーに話を聞いた。

※現在では終了

グループ共通カードの話を聞いたときは、
とうとうやるのか、と(磯部)

─── えんてつカードの誕生には、どのようなニーズや背景があったのでしょうか?

磯部:「現在のえんてつカード導入前は、遠鉄グループ各社が独自にポイントカードやシールといった販促活動を行っていました。ただ、お客様目線から見ればカードやシールはかさむし、特典は各社でしか受けられないなど、グループのメリットを生かしたサービスになっていないという課題があったのです。この点については何度か検討されてきましたが、各社の販促活動をひとつの仕組みの中に集約することにはさまざまな制約があって、なかなか進展しなかったようですね」

吉田:「遠鉄グループの大きな特徴に他業種展開がありますが、各社によってお客様の層もサービスの内容も大きく違います。従来の方法をやめて、未知の手法を選ぶことには、慎重にならざるを得なかったんですね。年齢や性別、嗜好の異なるお客様を結ぶことにメリットがあるのか、という意見もあったと聞いています」

磯部:「だから実際に、グループで共通のポイントカードを導入するプロジェクト(以下PJ)が発足したときは、とうとうやるのかという感じでしたね。これは一筋縄ではいかないぞという覚悟が、当初からありました」

えんてつカードのサービスは、
アンケートの積み重ねにより固まった(吉田)

─── PJ発足後、まず取りかかったのはどんなことでしたか?

磯部:「まずはインフラ構想のまとめが先決でした。といっても、遠鉄グループのように鉄道もあり、バスもあり、スーパーマーケットもありといった事例はありませんでした。そこで、ネットなどで基本的な調査を行いつつ、鉄道を基幹産業にしてスーパーマーケットを展開している私鉄など、実際に現地に足を運んでは、どのようなサービスをどのように行っているかを自分の目で確認することから始めました。その一方でカードの読み取り端末をはじめ、連動したPOSシステム、クレジット会社との連携システム、そして全グループを結ぶネットワークの構築が必要になりますので、システムメーカーと協議を重ねながら、細部に至るまで仕様を煮詰めていったんです。当時はスタッフも数人といった状態だったので、ひとり何役もこなす必要があって大変でしたね」

─── お客様にとって一番重要なのは「サービス」面の企画ですね。こちらはいかがでしたか?

磯部:「サービス面は目的もターゲットもはっきりしているので、インフラ構想に比べればスムーズでしたね。メインターゲットは、従来のクレジットカードや各社のポイントシステムの利用データから、20代~50代の女性と予想していました。そこで社内外に対するアンケートを繰り返しながら、『本当に使いやすいカード』像をお客様目線で組み立てていったのです」

吉田:「遠鉄グループ共通でポイントが貯められることは大前提として、年会費はもちろん無料でクレジットならポイント永久不滅。貯まったポイントは、1ポイント単位でも使えて、バスや電車でもポイントが貯まるというえんてつカードの骨子は、このアンケート結果をベースに固まったものです。特に交通機関も対象に採り入れたポイントカードは、デビュー当時は相当珍しい存在でしたね」

磯部:「ただ、その大前提としての共通ポイントを理解してもらうことが一番難航しましたけどね(笑)」

サービス内容もお客様層も異なる
グループ各社を束ねたのは“熱意”でした(吉田)

─── 難航したとは?

磯部:「共通ポイントの導入には、遠鉄ストアや遠鉄石油、バンビツアーなど、独自の特典を設けていたところからの異論がありました。日々のお買い物と年に数回の旅行とでは、特典の考え方や内容が大きく異なりますし、既にそれぞれ実績を挙げているのですから、なおさらですよね。でもお客様目線で考えたら、遠鉄と名のつくものはすべて遠鉄です。それぞれがグループ会社として独自に運営されているなんてことは、関係ない話ですよね。だから、これだけは譲れなかった」

吉田:「各社それぞれが戦略的に導入していた特典制度ですから、それを一旦リセットすることへの不安は当然あったと思いますね。交通機関のように、ポイント制度がニーズの掘り起こしにつながりにくい事業もありますから、どの会社のお客様も等しくメリットを感じられ、そしてグループ全社も等しくメリットを感じるための切り口、それが必要でした。導入後の今でも、お客様にとってよりベストなサービスの追求は続いているといっていいでしょう」

磯部:「だからグループ各社で利用率に差が出たとしても、必ずCS(お客様満足度)向上につながるということを、とにかく理解していただけるように何度も説得しました。グループ各社から営業部長クラスの方に集まってもらって、月1回のミーティングで資料を突き合わせて検討を重ねたんです」

─── 全社導入が決まった陰には、共通ポイントカードの意義を説いて回ったPJメンバーの地道な努力があったのですね。

吉田:「私にはもうひとつ、これが決め手だったと考えていることがあります。それは、グループの総合力強化をビジョンに掲げたトップの熱意。最後に各社を束ねたのは、このビジョンに象徴されるグループ力そのものだったと思いますね」

手のひらに隠れる小さなカードにも、
忘れられない大きな思い出(吉田)

─── 導入予定日まで半年を切った2008年初夏、ようやく吉田さんの登場ですね。

吉田:「広告宣伝活動や会員獲得方法の検討、優待提携施設との契約、従業員向けの現場教育の実施など、カード導入までに完了させなければならないことが山積していました。これらの業務を限られた人員で同時進行していましたので、異動したてだった私は、業務が滞っている分野や人手の足りない業務の補佐が主な仕事でした」

─── 全体のスケジュール進行を把握できている人は、一握りしかいなかったのでは?

吉田:「ホント、不安でしたよ(笑)。でも、パンフレットの校正業務やウェブサイトのページ構成の検討といったプロモーションに関わる業務をはじめ、プレスリリースの原稿を作ったりカードデータ抽出ソフトの仕様を確認したりと、それまでの保険営業部ではまったく経験したことのない多岐にわたる業務ばかりで、忙しかったですが毎日が新鮮でした」

磯部:「中でもカードのデザイン決定までの道のりは、強く印象に残っています。100種類を優に超えるデザイン案があり、それぞれの理由を役員にプレゼンしなければいけなかった上に、デザイナーに修正をお願いする時間までなくなってきて……。最終的にはイラストレーターというプロが使うドローイングソフトを覚えて、自分でデザインを微調整する羽目になりました(笑)」

吉田:「手のひらに隠れてしまうような小さなカードですけど、今では大きな思い出になっていますね」

遠鉄のカードから、地域のカードへ(磯部)
会員の暮らしに潤いを与える存在になれれば(吉田)

─── 実際に運用が開始された今、えんてつカードはどのような方向に向かっているのでしょうか?

磯部:「ポイントカードは5年後で30万人の目標を半年で達成し、現在40万人。クレジットカードも今では10万人の利用者がいます。数字だけではなかなか実感がわきませんが、浜松市の人口が80万人と考えると、我ながらすごいカードに育ったなあと感じますね」

吉田:「ですから、そろそろポイントカードとしての利便性を高めるフェーズは一段落して、いよいよその本領を発揮すべき時を迎えていると考えています」

─── えんてつカードの本領とは?

吉田:「グループ各社を横断する膨大なマーケティングデータの活用により、グループ一丸となって今まで以上のお客様サービスを実現することです。導入時のエピソードでも触れましたが、遠鉄グループは他業種展開しているために、収集したデータの活用法にもお客様や各社の業態の違いを十分に検討する必要があり、今も最適な方法を模索している最中です。でも、難しいだけに挑戦しがいがありますね」

磯部:「たとえば、ストアのお客様の消費動向から得たデータがそのまま百貨店に適用できるとは限りませんし、全社的マーケティングツールに育てるためにはまだまだ工夫しなければならない点があるといえます」

吉田:「一方で、1日平均5万件のペースで、カードの利用データは積み重なっています。DMの送付や売上のカウントにとどまらず、お客様の動きが手に取るようにわかり、各社で共通して有用なデータを活用できる仕組みづくり。それが完成すれば、遠鉄グループ各社が一体となって、お客様サービスの充実を図れるようになります。それがえんてつカードの本当の力かな、と考えています」

─── 最後に、えんてつカードの将来や可能性について、お二人の想いを聞かせてください。

磯部:「えんてつカードは、今はまだ“遠鉄”のカードですが、地域活性という意味では提携施設の稼働率アップなど多少は貢献できていると思います。次の目標を挙げるなら、街中の商店街でもポイントを貯められるようになって、地域のカードとして親しまれる存在になることかな」

吉田:「イメージとしては、遠鉄バスや電車が地域の足として愛されているように、日々の生活のシーンでなくてはならないカードにしていきたいと思っています。地方のカードとして、会員40万人という規模は、日本全国でもなかなかない数字です。今後は会員とのコミュニケーションにももっと力を入れて、一方的な情報発信ではなく、その情報を手にとってくださる会員に喜んでいただき、暮らしに潤いを与えることができるようなカードに育てていきたいですね」


磯部隆一
経営企画課
入社年/1999年

入社当初は乗合バスに深く携わり、ダイヤ作成やナイスパス導入などを経験。その後IT推進プロジェクトを経て経営企画課へ。現在はカード事業を離れ、グループ全体の経営企画に携わっている。カード事業の経験は、グループ内での人脈や業務への理解を深めた点で、現在でも大きな財産と語る。


吉田有希子
営業推進課(当時は経営企画課)
入社年/2005年

保険営業部で損害保険の営業を経験。遠鉄グループ各社をはじめ、一般のお客様を担当した。入社3年目に保険相談サロンの立ち上げメンバーに選出され、入社4年目にあたる2008年6月に経営企画課へ。えんてつカードのPRや提携交渉など、導入直前のあらゆる業務をこなし、現在も担当。

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