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「インバウンド推進」プロジェクト
2013年、日本を訪れた海外旅行者の数はついに1,000万人の大台を突破した。戦後50年以上にわたり、海外旅行の赤字国だった日本。21世紀初頭の2001年でさえも、出国者約1,620万人に対して、入国者は480万人足らず。ほぼ4倍に近い格差があった。しかし近年、日本という国は観光という新たな魅力を急速に備えつつある。冒頭の数字も通過点に過ぎないだろう。そんな新興の観光立国ニッポンが生む熱気に呼応して、遠鉄グループでも海外旅行者に向けたグループ一丸の取り組みが始まろうとしている。それが、現在もっとも新しいプロジェクトのひとつ、『インバウンド推進プロジェクト』だ。

Leader's Interview

プロジェクトリーダーが、現在の進捗や将来の目標、
プロジェクトにかける想いを語ります。

インバウンド推進PROJECT/リーダー
営業推進部 次長 鈴木 俊介
遠鉄グループ個々の事業の取り組みを 、
グループパワーにつなげる。(鈴木)

─── インバウンド推進PJのアウトラインについて教えてください。

鈴木:「その前に、まずインバウンドという言葉になじみがない方もいらっしゃるかもしれませんので、そちらからご説明しましょう。英語の『インバウンド』という言葉自体にはいくつかの意味がありますが、ここでは「海外から日本を訪れる旅行または旅行者」を指しています。逆に日本から海外に出かけることは『アウトバウンド』です」

松村:「日本では、戦後の復興期から長い間アウトバウンドとインバウンドの不均衡な状態が続いてきました。もちろん、アウトバウンドが圧倒的に多かったのです。しかしここ数年、訪日外国人旅行者は年々増加しています。学生の皆さんも、街中や観光地で外国語を耳にする機会が増えているのではないでしょうか」

鈴木:「2002年には、観光庁が『ビジット・ジャパン』という訪日旅行促進事業を開始しています」『インバウンド推進PJ』は、いわば遠鉄グループが一丸となって訪日旅行者を迎えるためにさまざまな取り組みを行う、総合的なプロジェクトといえますね。」

─── 国の施策に対して少し間が空いたように思えますが、理由があったのでしょうか。

鈴木:「もちろん遠鉄グループ会社でも、運輸やホテル、ショップといった観光関連の事業では外国人の方々への対応は進めていました。ただし、グルーブ全体としての統一した取り組みがなかった、ということですね」

松村:「僕の場合、ビジット・ジャパンが始まったのはまだ学生の頃でしたが、入社して保険営業に携わってからも、特に海外のお客様を意識したことはありませんでした」

鈴木:「ただしここ数年、特に静岡県では、インバウンドを取り巻く状況が大きく変化してきたといえます。ASEAN諸国の経済成長やビザ政策の緩和、LCC(格安航空)の台頭など、その要因は枚挙にいとまがないのですが、静岡県にとって2013年の富士山の世界文化遺産登録や和食の無形文化遺産登録、そして2020年の東京オリンピックの開催決定が大きかったですね」

遠鉄グループは、
旅行者にとって必要なサービスを提供している。(松村)

─── その環境の変化が、どのようにインバウンド推進PJに結びついたのでしょうか?

鈴木:「実は、私事ですが、このプロジェクトが持ち上がる前に、もうひとつ新規事業の立ち上げに関わったことがあるんです。新東名高速道路開通と同時にオープンした浜松サービスエリア内のショップ(遠鉄マルシェ)なのですが……」

─── オープン当時に現場で奮闘した方々を、別ページでも紹介していますね。

鈴木:「この店舗に、バスツアーを楽しまれている海外のお客様もお寄りになるんですね。高速道路を管理運営しているNEXCO中日本グループさんの政策もあって、日本のサービスエリアはショッピングモールとしても大変人気が高い。ですから、遠鉄マルシェでも海外のお客様をお迎えしています。まずそういった訪日のお客様に人気の高いアイテムを選び、その時間帯をねらって即席の売り場を展開してみたら、相当賑わうだろうなぁ、そういう仕掛けやおもてなしをしてみたいなぁ、と常々思っていました」

─── それがインバウンド推進PJの発足につながった?

鈴木:「いやいや、今回は遠鉄グループをあげてのプロジェクトですから、私の思いつきとは、直接関係ありません。もちろん、将来的なグローバル化を視野に入れているトップの思いと、中長期的な経営戦略を見据えた上での決定です。ただ私がマルシェで実感したような加速する『地域のグローバル化』は、他のグループ従業員も日々、さまざまなところで感じていると思います」

松村:「そうは言っても、遠鉄グループ全体として見れば、海外のお客様を意識してサービスを行っている事業はまだまだ少数派です。そこでグループ内部のインバウンド推進への取り組みの旗振り役となり、さらに対外的な交渉も行うパイロット的な組織が必要になる。それがこのプロジェクトが生まれた理由じゃないでしょうか」

鈴木:「松村君が言うように、今の遠鉄グループの中にはまだまだインバウンド推進につながるノウハウや手法が足りないのが現状です。ただし、逆に言えば、これはチャンスともいえます。遠鉄グループは、運輸事業に始まり、流通事業、観光・レジャー事業等、旅行者にとって必要なサービスを提供しています。そこに訪日観光客を呼び込むことができれば、遠鉄グループ全体にとって大きな成長が見込めるわけです」

「日本人の『視点』を捨てること」。
それがスタート地点だった。(松村)

─── このインタビューを行っている時点では発足後まだ数カ月という、
最も新しい新規事業プロジェクトです。現在はどんな取り組みを行っていますか?

鈴木:「まずはインバウンドに関する情報収集。そこから取りかかりました。遠鉄グループ各社や浜松駅周辺の状況といった足元の情報を集めると同時に、外に目を向けて国内外の先進事例の研究や、さらに外に行って対象となるお客様の国そのものを肌で感じる。そういったことが、今の我々には一番必要なことですね。特に、国内のインバウンド観光事業の先進事例として有名な高山市は、大変参考になりましたね。長年の取り組みもあって、人口9万2千人の街に22万5千人の外国人観光客が訪れています(※2013年のデータ)」

松村:「標識ひとつとっても、外国語を並べる順番や、初めて見ても迷わないデザインなど工夫が施されていますし、多くの飲食店のメニューなども外国語表記がなされています。基本的なことですがなかなか実現が難しい『標準化』という取り組みを、ひとつひとつ長い年月を積み重ねて今がある、といった印象を受けました」

鈴木:「このように浜松あるいは遠州地方も、官民が一体になって地域の魅力づくりを行うとともに、それを海外に向けて意欲的に発信する体制をとっていく必要があると思っています。例えば、現在大きなウエートを占める中国人旅行者を例にとると、まだ訪日観光の歴史が浅いこともあって、かなりメジャーな観光地に集中する傾向にあります」

松村:「ゴールデンルートってご存じですか? アジアで一般的な訪日パターンの、数日で日本を巡るようなツアーでは、成田に降りて都内を回り、京都・大阪、あるいは福岡から帰国、またはその逆パターンが多い。このメジャーなルートをゴールデンルートといいますが、その真ん中にありながら、浜松は単なる通過点に過ぎません。つまり滞在時間が短いのです。では、浜松に見るべきものがないかといえば、決してそんなことはない。それを掘り起こして発信することができていない、それだけなんです」

鈴木: 「これはベトナムを視察した時の経験ですが、基本的に彼らは日本に対する知識がない。浜松がどこにあるのかなんて、当然知らないんです。そんな彼らに浜名湖はきれいですよ、勇壮なお祭りがありますよと誘いかけても興味を引くことすら難しい。東京はここ富士山はここ、そして浜松はここ、と順序立てて説明して、やっと『ああ、それは日本の話かい』とつながる」

松村:「彼らが好きなもの、嫌いなもの、憧れているもの、満たされているもの。それらを肌で感じられるようにならなければ『彼らから見た日本の魅力』には気付けない。例えばタイ人は川魚を食べないが、中でもウナギなんてとんでもないという。ヘビみたいだというんですね。これで、残念ながらタイ向けの浜松名物はひとつ消えるわけですが、そんな経験を積み重ねてネーティブの気持ちに同化していってやっと、彼らにとっての浜松の魅力や『行ってみたい』という芽が見えてくるのではないでしょうか。私たちにとって学ばなければならないことは山積していますが、早くからこういう感覚を養い、磨くことは、プロジェクトにとって非常に大切なことだと肝に銘じています」

こんなプロジェクトができる会社は、他にない。(松村)
やってみなければわからない。だからやる。(鈴木)

─── 遠鉄グループのインバウンド推進活動を始めているお二人ですが、これからの展望をお聞かせください。

鈴木:「まず足元では、どの事業でも外国人にとって過ごしやすい環境、サービスを提供できるようにすること、これは急務です。もてなす態勢ができていないのに、魅力だけを伝える努力をしても逆効果になる」

松村:「そのための取り組みのひとつが、遠鉄百貨店本館と新館をつなぐ『イコイ スクエア』 、新浜松駅・バスターミナルや『e-wing』車内などで始めている無料Wi-Fiサービスです。世界の主要都市では、タブレット端末などを頼りに知らない国を歩く旅行者が珍しくありません。だから屋外でもWi-Fiがつながるのが当たり前になりつつあります。日本でも大都市では、駅周辺や繁華街ならWi-Fiスポットに困らなくなってきました。彼らはタブレットやスマートフォンで他の旅行者の口コミを調べながら、観光ルートを決めたり、入る店を選んだりするスタイルが一般的ですから、まずそういった環境整備から始めようということで『HAMAMATSU FREE Wi-Fi』の整備を進めました。このネーミングにも想いが込もっているんですよ」

鈴木:「言語対応ひとつとっても、標識はもちろん、あらゆるサービス提供者が外国人観光客を受け入れる街にならなければ、国際都市は目指せない。そのためには、他国に目を向けて多様な文化に触れたり、キラーコンテンツとなる新たな魅力開発を目指すといった外向きの取り組みと同時に、足元となる浜松のインフラを整えていく必要があります。浜松市内はもちろん、周辺地域ともできるだけ広範囲に連携して、外国人旅行者が快適に過ごせる街・地域をみんなで創っていきたい」

── それはもう、一事業者の範疇を超えていますね。

松村:「先行事例の先駆者たちが、みんな口を揃えて言っていました。『連携しなければ、決して成功はない』。これは僕たちも肝に銘じています」

鈴木:「そうかもしれません(笑)。ただ幸いなことに、遠鉄グループは創業以来、ずっと運輸事業を中心に地域とともに歩んできました。毎日、何万人という地域の方々にご利用していただきながら、です。そういった企業体として、地域との連携を今まで以上に強め、新たな役割を果たす『時機』が来たとも感じているんです。私たちが地域の方々の意識を変える、などというのはおこがましい。ただ遠鉄グループは暮らしの隅々にわたるサービスを行っているのだから、私たちができることに真摯に取組んでいけば、地域の『おもてなしの力』を少しは高めることができるという夢はあります。もちろん会社のプロジェクトである以上、最終的にビジネス上のメリットを生み出さなければなりませんが、地域の活性化が進めば、その結果として、遠鉄グループの利益およびその存在価値の向上につながっていくと信じています」

松村:「このプロジェクトは、短期的な視野では取り組めないと思っています。そもそもすぐに成果が出るものではありませんし、何年というスパンで腰を据えてかからなければならない課題にも直面するでしょう。でも、こんなプロジェクトを発足させられる会社に在籍し、チャンスをいただいた。とてもやりがいを感じますね」

鈴木:「私は今のところ、2020年というのはひとつのマイルストーンと感じています。オリンピックを中心に訪日旅行者の数はピークを迎えて、否応なく日本全体のホスピタリティーが試される年になるでしょう。日本のファンは増えるのか、それとも減るのか。浜松や遠州地方のファン増加につなげられているか。もちろん、2021年を『祭りが終わった後』のようにはしたくはありませんが、そのためにどうしていけばよいのかという答は、そう簡単には見つかるものではないでしょう。
 私たちが若い頃、よく上司にこう言われました。
『遠鉄グループの各社、各事業は社会科学の実験をやっているようなものである。だから、まずはやってみること。やってみていい結果のものは残していけばよい。うまくいかなかったものはやめればいい』と。当時のその上司と同世代、もしかしたらそれ以上の年齢となった今、遠鉄のDNAである『まずは、やってみる』ということに立ち戻り、これからも実践していきたいですね。実際に、新規事業は『やってみなければわからないこと』が多い。ああでもない、こうでもないと試行錯誤を重ねながらも、それが地域とその未来に貢献し、次世代を担う若者の成長につながるのであれば、もう最高ですね」

鈴木俊介
営業推進部 インバウンド推進プロジェクト
入社年/1986年

新東名高速道路浜松サービスエリア・遠鉄マルシェ店の開業を指揮するなど、これまでも新規事業立ち上げに関わってきた経歴を持つ。
他社や行政との交渉も数多くこなしてきた経験をフルに生かし、遠鉄グループが進むべき新しい道の地ならしに挑む。

松村正明
営業推進部 インバウンド推進プロジェクト
入社年/2007年

入社後の7年以上保険営業部で過ごしてきた松村にとって、営業推進部への異動は初めての経験。保険営業時代に日本全国へ出張するなどして培ったフットワークの軽さと、海外市場に対する先入観のない素直なアプローチを強みに、プロジェクトの成功を目指す。

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